北アイルランド遠征

というわけで一泊二日で北アイルランドまで遠征してきました。
朝9時過ぎの列車でダブリンを離れ、昼前にはベルファストに到着。
でも、最初の目的地はここではなく、コーレエン(Coleraine)という場所。
ベルファストから北へ電車で一時間半ぐらいの場所。

でも夕方までにたどり着けばOKということなので、ベルファストで途中下車。
ちと街中まで繰り出してみる。

これでベルファストは3回目。最後に来たのはちょうど2年前。僕を経済的に支えてくれているありがたい団体の年次大会がかの地で開かれていたため、着いたばかりで右も左もわからない状態で拉致られました。あの時も街の雰囲気がガラリと変わって驚いたけど、今回もちょっと驚いた。今ベルファストは再開発ラッシュで、古い街並み*1はそのままにモダンなビルディングがポコポコ立っているし、今でもいろいろと掘り返して新しいショッピング・センターを作っていたりする。街中から中央駅までは歩いて10分ぐらいかかるのだけれども*2、駅前の再開発の結果シティ・センターから駅までのあたりは立派なビジネス・センター*3に変わり非常に街の利便性が向上している。簡単に言えば、街全体がダブリンとの結びつきを強めたいという願望に溢れている。だからダブリンからの到着口となる中央駅周辺が急速に発展しているのだ。

と、すごく便利になったんだけど、旅行者にとってまだ使い勝手が悪い面も幾つかある。特にダブリンで暮らしている僕には、この二つの街の違いというのはすごく興味深い。

簡単に列記すると

1 通貨が違う
2 アクセントが違う
3 ネットカフェがほとんど見当たらない
4 パブが少ない

1に関しては、まあ国が違うからしょうがないけど、EU加盟国なんだから素直にユーロを使え、と僕は思ってしまう。いやスターリング・ポンドに愛着があるのはわかるけど、「こども銀行券」みたいなものを渡される身になれ。*4

2に関しては、僕のリスニング能力はたかがしれているというのもあるけど、北アイルランド・アクセントは本当に苦手。北アイルランド・アクセントもいろいろな種類があるらしいし、歴史的にスコットランド、とくにグラスゴーあたりと結びつきが強い地域だけに、スコットランド・アクセントの人も居る。もちろん彼らにも僕のインチキ・ダブリン・アクセントはわかり憎らしく、コーレエンまでのチケットを買おうとしたら、ポートダウンまでのチケットを渡された。たぶん窓口のオッチャンが操作をミスっただけのような気もするけど。

3.これはダブリンが異常なんだと思う。そんだけの需要がある背景はもちろん移民が多いこと。祖国への電話、インターネットでのコミュニケーション、彼らがそれを心底求めているため、街中いたるところにネットカフェが出来ているし、価格も非常にこなれてきた。ベルファストでちとメールを送らなきゃいけなくなって探したけど、結局見つからなかった。それにダブリンと比べると外国人の割合が圧倒的に少ない。

4.これもダブリンが異常。ロンドンですら少ないなと思ったぐらいだから。ダブリン人にとってパブとブックメーカーとあとコンビニぐらいあれば生活が困らないのだろう。


というわけで、すこしばかりトラぶった*5

その後、列車にまた揺られ、遥々来たよコーレエン。迎えに来てくれたおっさんもばっちり訛っていて、本気でわからない。とりあえず今回宿の予約からすべて彼に丸投げなので適当に相槌を打ちながら、愛想良くしておく。


宿に連れて行ってくれるもんだと思ったら、最初はこの地域で一番偉い人の家へ。数人の会員の人たちがいて、挨拶を済ませたあと、皆で移動する。

何でもこの団体の100周年記念で小さな花園を作り、その落成式があるそうな。聞いていないよそんな話。で、アイルランドのガバナーも来るそうな。アイルランドのガバナーと言っても、僕がお世話になっているクラブのおしゃべりなオッサンのこと。僕にはちっとも偉くは見えない。

なんか知らないけど落成式にゲストとして招かれ、写真とか取られる。

その後、またどこかに拉致られる。どこかと思えば、町役場。*6なんで町役場に連れてこられたのかわからなかったんだけど、中から一際偉そうなオッサン登場。説明を聞くと町長らしい。町長の案内で新築の町役場件町議会を案内してもらう。なんか知らないけど社会見学。議会を見た後、ロビーに知らない人が三人ほどカメラを持って控えていた。なんだろうと思うと、外に出ろということ。ここでまた記念撮影。その後皆ICレコーダー片手にインタヴュー。聞いたところ、地方新聞の記者らしい。一応3紙あって、全部来たらしい。何でか知らないけど、僕もインタビューを受ける。たぶん名前ぐらいは載るんだろう。

その後町長執務室で酒盛り。この地はブッシュ・ミルズの蒸留所に近いところ。とりあえずおいしい地酒のあるところでは、それを一生懸命よいしょするのが定め。「おいらジェーメソンも好きだけど、ブッシュ・ミルズ、とりわけブラック・ブッシュは最高だよね」というと、皆大喜び。飲め飲めと進められ、何杯も飲まされる。最後には町長自ら、ブッシュ・ミルズのミニチュア・ボトルとこの辺で作られているらしいクリスタル・グラス製のショット・グラスのセットを下さる。よいしょって大事だね。

これでまだ終わらない。なんせ本来の目的は夕方からの会合でスピーチすること。程よく酔っ払い、おいしいタダ飯をご馳走になって、気持ち良く、後味の悪い話*7を話す。僕の英語はどういうわけか酒を飲むほど流暢になるという仕様になっているので、いつもよりはうまく喋れたと思う。酒を飲むと、無駄なことを考えなくなるのと、めんどくさくなってより簡単な表現、よりわかりやすいアクセント、あと大げさなボディ・ランゲージになるためなんだろうけど。あと恥を感じる回路が遮断されるのもいいんだろう。*8


というわけで、楽しく酔っ払って、B&Bにようやくたどり着いたところ。
次の日は次の日で別の場所のミーティングに参加することになっている。
たぶん今回の滞在で、再び北アイルランドを訪れることはないだろうし、次いつ来るかまったくわからないから、ちょっと楽しもうと思っているしだい。

*1:といってもこの街が発展したのは産業革命以降だから、ヨーロッパの基準だとそんなに古い街ではない。

*2:要するに街外れにあったということ

*3:ヒルトンもあるし、コンサート・ホールもある

*4:イギリスって変な国で、それぞれの地域で通貨を発行している。北アイルランドだとアルスター銀行、もしくはアイルランド銀行が発行した北アイルランド・ポンドが流通している。一応他の地域のスターリング・ポンドと等価交換が前提だけど、イングランドとかだと受け取ってもらえないことも多々ある。基本的に北アイルランドでしか通用しない通貨だと思っていたほうが良い。受け取って貰えればラッキーぐらい。だからお釣りを貰うとき、イングランド・ポンドを貰うと少しうれしい。そういう意味で僕は「こども銀行券」という表現を使っています。

*5:もう一つは、カフェでお釣りを貰うときに細かい紙幣がなくて「ちと待って」といわれて素直に待っていたら、いつまでたってもおつりが来なくて、苦情を言ったんだけど、担当した女の子がその場に居なくてなかなか信用してもらえなかった。ちょうどシフトの交代の時間だったみたいで、帰ろうとしているその子を捕まえて、事情を説明させたらようやくもらえた。彼女曰く「え、誰もくれなかったの?頼んでおいたのに」だそうな。アイリッシュは北も南も基本的にいい人だが、たまに大事なことを忘れる。

*6:タウンなんだけどBoroughを名乗っている。一応女王様が来たことあるらしく、そのときに認めてもらったんだろう。役場にまだだいぶ若い女王樣の御真影が掲げてあったから

*7:例の人種差別ネタ。北だろうが南だろうが、都市だろうが田舎だろうが、関係なく情報共有のために喋る。しかも今回は一応ガバナーも同席だから、だいぶ影響があるだろう。一応将来的に、若年者対象のそういう教育プログラムを始めることになったらしい。

*8:逆に言えば、普段の英語は未だにメタメタ。