GetARef 6

数日前に導入したGetARefというソフトをいろいろといじっています。

このソフトは、「論文作成支援」という名目に、主に文献整理を目的としたもの。そのためほとんどの人には縁のないかもしれません。どういう機能をもっているかといえば、論文、書籍のデーターベースを作成するためのソフト。ただそれだけの機能なら、AccessでもExcelでも、なんなら原始的にテキスト・ファイルを大量に作成して検索ソフトで一括検索とかでもOKなんだけども*1、このソフトを使えば、ネット上のデーターベースからぶっこ抜いたデーターをこれで一括管理してくれるわけで、ちょっとは作業が楽になる。楽になるといいな、楽になると信じよう。

と、ここまでなら別にこのようなソフトを使わなくてもOK。データーベースからのダウンロード*2のあとの処理も実は検索ソフトさえまともなら、わざわざこういうソフトを使う必要がなかったりもするわけで、決して安くはないソフト*3なので、そのへんが導入をためらっていた最大の要因。

でも、これじゃないとできない機能はさらにあって、文献を管理するだけでなくWordと連携して、注記、文献目録作成を支援してくれるとのこと。投稿する雑誌のスタイルに合わせて、注記の表記方法も弄れるらしい。これ実は意外と時間が掛かる作業&だいたいそのころには締め切りに追われている&脳みそオーバーヒートでうっかりミス多発、ということを何度も繰り返してきている僕には、実に魅力的な機能だったりします。だから「文献管理」ソフトではなく、「論文作成支援」というわけなのです。

こういうジャンルのソフトは英語圏では、結構使われている模様。なんせ、大学院生が自由に使えるPCがほとんどなく、学科の予算でデジカメ1台しか買えない、指導教官が使っているPCは初期iMacというぐらい、金銭的にも設備的にも遅れていたアイルランドの大学ですら、学生に導入を薦めるぐらいのもの。多くのデーターベースでも、そういうソフトウェアに対応したファイル形式で結果を落とせるようになっています。そういうわけで、向こうにいたときに学校がライセンスでEndnote*4を一括購入するからだいぶ安く*5導入できる機会があったものの、こちとら英語だけでなく日本語の論文や書籍も扱わなきゃいけないわけで、英語版のEndnoteを導入すると、その辺がたぶん無理そうで踏ん切りがつかなかった。

ひょんなことから、今回GetArefのほうを手に入れることが出来たので、「人柱」としてインストールして、使っている次第。

結論から言えば、それなりに使える。ただし結構ハードルは高そうだし、使える分野、特に人文科学系だと限定されるだろう、そういう印象。

最大の理由はやっぱり日本(語)という特殊な環境。日本語で書かれた論文を主に扱うデーターベースの数が少ないという印象。いや単純に僕が知らないだけなのかもしれないけど。例えば歴史学なら、主要な雑誌として『歴史学研究』、『史学雑誌』があって、あと日本史なら『日本史研究』、あと方法論や地域ごとに分かれているけど、それらを一括で検索できるところはたぶんない。それぞれホームページとかあるのだけれども、そこからでもバックナンバーの検索ができないところもある。検索すらできないのだから、こういうソフト向けのファイルでダウンロードとか夢のまた夢。

もちろん大学図書館OPACとかWebcat、なんか最近始まったみたいだけどWebcat Plusでも、そういう方向でのサーヴィスはほとんど行われていないみたい。

だから日本語の雑誌、書籍は当分は手打ち入力なんだろう。メンドクサイ。

これが英語圏のものになると状況はぜんぜん違う。

単体の雑誌レベルでも、例えばイギリスのPast & Presentあたりだと、検索はもちろん、この手のソフト用に検索結果をダウンロードすることが可能*6。さらに金さえ払えば*7その場でPDFで閲覧することも可能だったりする。

もちろんこういう雑誌をまとめて扱うデーターベース(Ingentaとか)もある。こういうところからも検索結果をダウンロードして、このソフトに取り込むことは可能。さらに論文のコピーの注文とかも出来たはず。

金に糸目つけなければ、座ったままで研究に必要な論文のリスト作成、コピーの収集なんて朝飯前の世界なのだ。泣きながら国会図書館に行ってコピーの依頼をお願いするとか、遠くにある大学図書館からお取り寄せをお願いするとか、そういう手間はだいぶ省かれる。*8

というわけで、人文科学系で英語論文を読まなきゃいけない人間だと、リストアップの作業をだいぶ簡略化してくれるGetAref。今のところ使い勝手の悪さはない。マニュアルが薄いとか、使いこなすための情報量が少ないとか、日本語のオフィシャル・ページの情報が少ないので、英語の方見にいったらもっと少なかったとか、いろいろありますが、とりあえず当面は使う方向で。

たぶん最大の問題は、リスト・アップするのに満足して読まない人的要因のほうにあるのだろうし。

*1:結局未だにこの方法を利用してます。

*2:メールやらテキストやらいろいろな方法で落とせる

*3:Endnoteはアカデミー・パックで5万?ぐらい。GetArefでも学生向けで1万数千円。

*4:たぶん一番有名かつユーザーが多そう

*5:それでも2-3万円ぐらい

*6:GetAref向けのファイル形式は選べないけど、Endnote用でインポートすることが可能

*7:正規の会費を納めなくても、一日一論文単位で短期利用も可能

*8:もちろんそれだけですべて集まるなら誰も苦労はしないし、データーベースに入っていないような雑誌に興味深い論文が入っていることは良くある。結局足で稼がなきゃいけないのはどこでも一緒。