チャンピオンズ・リーグ決勝 ACミラン VS リバプール 展望

チームの格、近年の実績、選手層、どの点を見てもおそらくACミラン有利は揺るがない。揺るがないといっても、所詮サッカー。何が起こるかわからない。そして、一発勝負の大一番、紛れが起きても少しも不思議ではない。特にアンチェロッティお得意のチキンぷりを見せたりしたら・・・。

決戦に向け、リバプールの立場から少しばかり展望を。

今シーズン、プレミア・リーグでは散々たる結果になったわけだが、カップ*1、そしてどういうわけかチャンピオンズ・リーグでは、それに反比例して上々の成績を収めたリバプール。そのむらっけがこのチームの魅力の一つといってもいいかもしれない。

攻撃のパターンの基本は、ミラン・バロシュの「無駄走り」にあると思う。最近ちっとも点を取らない、この「ユーロ2004得点」だけど、迫力のある「無駄走り」はまだまだ健在。チーム戦術もあり、だいたい60分過ぎにはシセと交代するパターンが多いのだけれども、その60分間、とりあえず走る。走り続ける。サイドへ、そしてDFラインの裏へ。

もちろん「最近いくら点がとれていない」からとはいえ、彼を無視するような自殺行為はもちろん、相手DFは取れない。うまくオフサイド・トラップを仕掛け、彼の「無駄走り」を徒労に終わらすことができればいいのだけれども、リバプールの中盤には質のいいパサーが揃っていること、そして何より、彼自身オフサイド・トラップを恐れず、常にスペースへ走りこむ。*2そして、どのように統制の取れたチーム、たとえACミランとはいえ、一試合のうちに何度か、彼にラインの裏を取られるだろう。だからとは、彼が点を入れられるかどうかはまた別の問題なのだけれども。

しかし、このバロシュの「無駄走り」によって、彼の得点機が生まれるというよりも、むしろ、それによって生み出される作用の方が、リバプールにはありがたいのかもしれない。まず、考えられるのは、相手DFがそれなりに疲労するということである。ご存知のようにACミランのDFラインはお世辞にも若くはない。バロシュの動きにどれだけ対応できるのか。おそらく終盤になればなるほど、ボディ・ブローのように効いてくるだろう。次に、彼が囮になることで、マークがずれ、そこへ中盤から飛び出してくる選手がそのスペースを有効に使えるということ。ルイス・ガルシアーの良さがここで生きてくる。こういう攻撃を受ける結果、相手DFはラインを積極的に押し上げることが次第に難しくなること。そして、これによって、最終ラインと中盤の間にぽっかりとスペースが生まれる。そしてこのスペースをリバプールが誇るキャノン砲部隊が効果的に使う。リセにしろ、ジェラードにしろ、ミドル・シュートを撃つ時にためらいも迷いも微塵に感じさせるない。流れのなかで鉄壁のACミランDFを崩せるとしたら、上記のようなシナリオしかないかもしれない。

それがダメなら最後にすがるはセットプレー。ただし、ジェラードが直接狙う、もしくはヒィッピアの高さを生かすか。ただし、スタムをはじめ、ACミランのほうも高さはあるし、ジーダーも安定した反応を見せているので、それほど得点機には結びつかないかもしれない。ただし、ガットウゾあたりが、ピルロを守る意味も込め、激しく肉弾戦を展開しそうなので、結構危ない位置でFKを得る機会はそれなりにあるのかもしれない。

ACミランの攻撃を封じるには、とりあえず、シェフチェンコクレスポに90分間仕事をさせないということ。さすがにこれを完全に遂行することは、まず不可能だろう。その次に彼らがやるべきこと、それは神様にお祈りするということ。ボールがゴールに飛びませんようにと。まあ、それじゃあんまりなので、おそらく、ベニテスの戦略としては、徹底的にピルロを潰しに掛かるということをおこなうだろう。その役割はジェラードが務めるのか、シャビが行うのか、わからないけど。とりあえず、ピルロを潰せば、少なくともボールの展開に手間取ることは間違いないだろう*3。カカの対応は、難しいけど、ルーニーまでは早くないし、ランパードほど強靭じゃないし、スコールズのいやらしさもないから、たぶん大丈夫?

と、書いてみたものの、やっぱりキツイね、リバプール

まあこれぐらいキツイほうが、このチームのポテンシャルがきっちりと出せるということは、経験的にわかっているのだけれども。

まあ、リバプールにとって朗報は、どうやらクレスポの出場は危ぶまれているらしい。アンチェロッティは出られるみたいな発言をしているのでまだわからないし、そもそもブラフかもしれないけど。

*1:カーリングカップ準優勝

*2:彼と交代で投入されることの多いシセもだいたい同じようなプレーを要求されているので、ある程度チームの約束事=戦術として共有されているのだろう。どうでもいいけど、シセまた髪型変わっていた。あの縄文土器みたいな髪型のほうが呪術的で良かったとおもうだけれども。

*3:それでも、チャンピオンズ・リーグ決勝の戦い方をよく知っているセードルフが中盤にいるというのは厄介。