バカップル死闘編「さよならはいわないよ」

だいぶ夏めいてきたアイルランド。家の前の芝生では、ガキがシートを広げて日光浴なんてしゃれ込んでいる、そんな平和な休日。

カップルは先週初めぐらいから、「日曜日はベルファーストに遊びにいくぜ」とか吹いていたのですが、案の定、計画は流れたらしく、おとなくしくショッピングに行った模様。仲良く夕方に帰ってきて、夕飯を食べているなと思いきや、どうも雲行きが変。また喧嘩か、と思いつつ、当然放置していたら、また彼女のジェネが血を流している。やれやれと思いつつ、ジャネットとその彼氏と僕とで、とりあえず分断して、冷静になるのを待つ。部屋で話し合いをするとろくなことが起こったことがないので、今回は話し合いをリビングでさせる。最初、ジャネットとその彼氏が仲介に入る形で話をさせていたら。カールが逆切れして、家から飛び出した。泣きじゃくるジャネ。どうにかこうにかカールを家に連れ戻し、もう一度話し合い。だいぶ二人とも落ち着いてきたみたいなんで、二人きりにさせて、部屋に戻ると30分もしないうちに罵り合いに。1分間に20回ぐらい放送禁止の4文字単語が、会話の節々にちりばめられたすてきトーク。一番離れた僕の部屋にも聞こえるぐらいの怒声で。

戦線が拡大したようなんで、様子を見に部屋から出ると、廊下にいたジェネが「天井収納を空けて欲しいとのこと」、空けてやると、トランクを取り出して、荷支度。「ウェールズに帰える」といい始める。

おい、おい、おい、と思い、カールの様子を見に行くと、すっかり酔っ払い、自暴自棄モード。やれやれ、思いつつ、外に連れ出し、芝生に寝転がりながら話を聞く。あたりは既に真っ暗だ。

どうやら彼には何が原因なのかわからないらしい。彼の中では、どうしようもない家庭から彼女を救い、彼女にいろいろなものを買い与え、彼女に尽くしてきたつもりらしい。
「こんな大バカ野郎はじめてみたね。そんなことなんの自慢にもならないよ。それぐらい誰だってできるさ。今お前がやらなきゃいけないことは、彼女に謝るだけだろう?」
「それができたら、こんなことにはならないよ。オイラは、彼女がどこに行ったって、彼女のことを愛している。わかるだろう、オイラが心の底から彼女を愛していることを」
「ほんとにバカだよ、お前は。状況わかってる?」

そんなこんなのあいだにジェネの荷造りは大方すんだ模様。とは言え、もう夜。どうする気だ?とりあえず「あの阿呆は、本当は誤りたいんだ、でも誤り方がわからないんだ」とフォローを入れるも、聞く耳持たず。「もういい、明日ウェールズに帰ります。いろいろありがとう。」って、おい。家主交えた会議は昨日今日だぞ。大概にしろよ。

つうわけで、現在午前一時。カールはリビングで酔いつぶれて、ぶっ倒れています。ジェネはジャネットの部屋で泣き続けています。勘弁してください。