日本は大変なようで(サッカー: アイルランドVSブラジル)

サッカーのお話です。
オマーン戦のあとの騒ぎは大変なようですね。
僕はここ半年ほど日本代表の映像はまったくといっていいほど見ていないので、それこそネットを中心としたテキストから判断するしかないのですが、ちょっとひどいみたいですね。

話変わって、アイルランド代表について。
先のワールドカップで検討したこともあり、結構好印象をもたれたかたもいるかと思います。若手の台頭と規律ある組織プレーと闘争心で、明らかに見劣りするフィジカル(アイルランド人はごく一部の例外*1を除いて、日本人と身長はあんまり変わりません。ごついけどな。)とテクニックを補う。そんなチームです。

とはいえ、ユーロの予選では、スイスに競り負けて本戦質上を逃し、国民の熱い期待を裏切ることになってしまいました。

昨日は、ユーロ以後、つまりワールドカップへ向けた再出発の日。相手は、前回ワールドカップ優勝のブラジルをホームに迎えての一戦でした。しかもブラジル、ほとんどフルメンバー。チケットは取れなかったのでパブで観戦です。

簡単なレヴュを。(酒飲みながらの観戦&翌日に書いてあるので、正確ではないかもしれません。)

日韓ワールドカップ直前に、監督との不仲が原因でマンチェスターロイ・キーンが離脱してから、アイルランド代表の精神的、そして攻撃の核は二人の若者にゆだねられてきました。現在トッテナムに在籍するエースストライカー、ロビー・キーン。と、アイルランド史上最高額で昨年チェルシーに移籍した、ダミアン・ダフ。この二人が中心となり、前線からの激しいプレスと、サイド展開が、チームのキーコンセプト。この哲学は、再出発を果たした新アイルランド代表にも継続されていました。

とはいえ、頼みの綱のダフが、直前にまたしてもプレミアリーグでの試合で怪我をしてしまい、大駒一枚を欠く状況で、王者ブラジルとの対戦。戦前の予想は圧倒的にブラジル有利*2。ワールドカップ決勝時のスタメンがほとんど顔を揃え、ミランでの活躍が著しいカカがリバウド*3に変わりスタメンをゲット。隙は、上がったら帰ってこない両SB(カフーロベルト・カルロス)と、頻繁にゴール前までドリブルで上がりたがるCB(ルシオ)と、不思議というか不安定なポジショニングとお笑いプレーに定評のあるCB(ホキ・ジュニオール)って、ディフェンスライン全員なんですが、そのぶん圧倒的な攻撃力で、凌駕してしまえ、そんな感じのチームコンセプトかと。

しかし、そんな前評判を覆すかのように、アイルランド代表は最初から全力で、飛ばします。前半5分ぐらいに中盤で、全体のバランスとパスを散らすことを期待されていたブラジルのジルベルトと、「東邦学園スライディング部隊」を彷彿とさせるような、二人掛りでの殺人タックルで破壊。(ジルベルトは前半14分で交代→エディミルソン)このような激しいプレスに戸惑ったブラジルは前半20分過ぎまでペースをつかめません。おそらくこう思ったことでしょう、「親善試合ちゃんかい」って。当然中盤でのボールキープがままならず、両SBが上がれないということが主な原因なんですが。ですから前半はアイルランドが押し気味にプレー、逆にブラジルがカウンターから3トップでチャンスメイクと、当初の予想とは違う展開。

しかし、前半も半ばを過ぎると、次第にブラジルもペースをつかみはじめ、両SBと3トップを中心にゲームをコントロールし始めます。しかし、3トップ(ロナウドロナウジーニョ、カカ)の連携が今ひとつなのと、カフーのクロスの精度がいまいちなため、決定的なシーンを数多く作るということなく、逆に、開いた両サイドのスペースをアイルランドに使われカウンターを食らうという感じで、前半は終了。ポゼションはアイルランド49、ブラジル51と互角。ブラジルにとって不幸だったのは、ロナウジーニョからのスルーパスに反応したロナウドPAないでアイルランドCBに倒されたものの、審判に流されたシーン。何度かリプレイで映像が流されましたが、うーん、明らかにPKでした。アイルランド人の方々もそのシーンが流されるたびに苦笑いしていましたが。

まあ、両者ともに攻めあぐねた感は否めない展開。アイルランドに関して言えば、2トップ、キーンとモリソンが両者ともに、いわゆるちびっ子ドリブラーなタイプで、サイドからのクロスにうまく反応できない。(それでもキーンはがんばってうまいポストプレーやマークをはずしてのヘディングなど見せ場は作った。モリソンは?ちょっと下手かな。)また、右サイドハーフホランドがスペースに流れ、そこから起点になるという形は数多くあったが、その脇を猛スピードでオーバラップする右SBのカーへパスが出ることは、まったくなく、この辺の連携がまだかみ合っていない、という印象。

後半。ブラジルの方は前半の反省、つまりポゼッションで互角、これは明らかにブラジルらしくない状況。これを修正すべく、カカ、ロナウジーニョが積極的に、交互に中盤まで下がる、つまり楔にはいるプレーを意識し始めます。結果、ゼ・ロベルトのドリブル突破やルシオのオーバーラップ、ロベルト・カルロスのロングシュートなど、前半に見られなかった、ブラジルらしいプレーが多くなり、アイルランドを圧倒し始めます。ただ、この日のアイルランドの守備陣の守備意識はものすごく高く、文字通り体を張ったプレーでゴールを守ります。審判の笛に助けられたという感はありますが。

攻撃に関しても、ようやくオーバラップしたSBにもパスが出るようになり、より組織的に崩そうという試みが見られるようになります。ただ、高さでブラジルに圧倒され、またクロスの制度も高くないため、決定的なシーンを作るには至らない。何度かロビー・キーンが苦し紛れのシュートを放ちますが、枠を捉えきれない。

ブラジル期待のバティスタが中盤に入って以降、中盤での主導権は完全にブラジルに。ただ、アイルランドも途中交代で入ったマカスターのボールキープやブラジルのホッキ・ジュニオールのミスに乗じたカウンターでゴールを狙いますが、ジータの安定したポジショニングとルシオのカヴァーリングにも助けられ、ブラジルもゴールを奪わせません。

という感じで、90分の白熱した試合は幕を引きます。

ブラジルは、4バックにしたときのSBのカバーリングという問題、あといつまでカフーを代表に呼び続けるんだろう?そろそろ後任人事を始めてもいいんじゃないの?という疑問。さらに、ヨーロッパで活躍している選手を中心に選考したと思われるのですが、ホッキ・ジュニオールは正直どうかと思います。空振りやら、ゴール前でクロスが上がる瞬間にふらりとマークをはずして(はずされたんじゃなくて、マークに付き忘れたような印象でした)ロビー・キーンにフリーにしてしまうなど、期待通りの活躍で、パブ中に笑いを振りまいておりました。カカ、ロナウドロナウジーニョの3トップは強力なんだけど、ロナウドがこの二人にパスを返すという発想があれば、手がつけられなくなるんだろうなぁ、という印象。

アイルランドは、守備は堅いし、両SBの吹っ切れたオーバーラップなど印象に残りました。欲を言えば、すこしクロスの精度が上がれば、ものすごい武器になるだろうと思う。テレビカメラが何度かベンチのイワン・ハートの苦々しい顔を映していました。ただ、ハートがいないということで、セットプレーからの攻撃が、それほど脅威になれえなかったというのは、一つの事実であり、優秀なキッカーが一人いるだけで、このチームの攻撃力は、段違いに変わるのだろう。

また、今回故障で外れたダフのポジションと、それと絡んで、FWの選考は、当分議論が続くのでしょう。理想から言えば、ダフは中盤のサイド。FWはロビー・キーンと複数のタイプのFWを用意して、戦術的に使い分ける、用は、ワールドカップでやったサッカーです。そうすると、オプションの一つになるであろう、電柱系FW、ワールドカップでは後半途中の勝負どころでみせた戦術が、現在はちょっと使えないのは痛いところ。何せ、アイルランド産電柱の代名詞クィンは当に引退して、現在は解説者*4の身。電柱系FWが一人確保できれば、彼らは厳しいヨーロッパで戦い抜くことができると信じています。


確かに、アイルランド・サッカーはファンタジーやスペクタクルなんて言葉とは無縁です。無骨で、運動量と気合で押し切るサッカーです。でも、弱いなりに、いや、弱いからこそそういった確立されたスタイルの徹底が必要なんだろうと。

試合後のパブの様子は、ものすごく皆さん幸せそうでした。何せワールドカップで検討→ユーロにすら出られなかった、という心の傷をもった状況で、再出発初戦のブラジル戦です。期待とでも、どこかに諦めみたいなものが交じり合った状況から、「俺たちはいける」、「このままでいいんだ」という感情への変化。パブ中が惜しみない拍手で包まれました。

PS. 某国のブラジル人監督がこの試合をビデオで見て、何か感じてくれることを祈っております。

*1:先のワールドカップとかだと、サブのFWとして活躍したクィンとか

*2:日本と違い、賭けの対象になっています、公に。テレビ放送でも試合直前にオッズがでました。次回以降は、ちゃんとブックメーカーに行ってから観戦しようと思いました

*3:彼は呼ばれなかった

*4:意外としゃべるんで、びっくりしました