ワールド・カップ予選 フェロー諸島 VS アイルランド
今日ダブリンからチャーター機でフェロー諸島に渡る予定だったアイルランド・サポは濃霧のためにフェロー諸島にある空港が閉鎖されたために辿り着くことができなかった。
その心配された霧は、多少残っているものの、試合に影響するレベルではなかった。なにせスタジアムには照明がない。夏のこの季節ならほとんど日は沈まないからたぶん必要ないのであろう。しかし、雨はTV画面で雨粒が確認できるほど強く降っている。芝のコンディションもそれほど良くはない。育った環境のおかげか、雨の中での馬力勝負に滅法強いはずのアイルランド代表が、ボール・コントロールに戸惑い、急加速、急ブレーキの際に足を滑らせる。こういう状況では、技術の差があまり発揮することができず、結構厳しい展開に。
もちろん、全般に見るとアイルランドのペースなのだけれども、細かいところでミスが生じ、それに観衆の声援に後押しされたフェロー諸島の選手達が全力で走りこむ。前半は結果として何度も危険なカウンターを喰らうはめになった。
アイルランド代表も土曜日のイスラエル戦からまだ立ち直りきれていないのか、時折中途半端にプレーが目立ち、それをフェロー諸島の選手に拾われて、ピンチを招く。それが気迫を呼ぶのだけれども、どうもうまくその感情をコントロールできずに、悪いときに良く見られる「気合の空回り」状態へと陥りかけた。この予選リーグで、試合内容以上には結果がともなっていないのは、この感情コントロールの稚拙さに原因があるのかもしれない。
ここでスタメンの確認を。
エリオット モリソン ダフ キルバーン ロイ アンディ ハート カニンガム オシェイ カー ギヴン
予想とは違い、期待の新星、スティーヴン・エリオットが頭から出場。これがワールド・カップ予選初登場となる。前半は、うまく繋ぎつつ、ポゼッションの比率を高め、PA付近から個人技で打開しようという意図が見える戦術。これが空くコンディションとマッチしない。トラップ・ミス、パス・ミスが目立つ。もちろん相手はほとんどのプレーをファールで止めなくてはなられないほど、技術の差はある。しかし、審判が流したり、アドヴァンテージをなかなか認めてくれないために、うまくペースをつかめない。またフェロー諸島DFの意思統一は図られており、果敢にオフサイド・トラップを仕掛けてくる。これにことごとくモリソンが引っかかる。たしかに微妙な判定もあったが、モリソンがちょっと掛かり気味なのと、中盤でボール・コントロールに少し手間取ったために、気持ち飛び出しのタイミングがずれていたのも事実。そうこうしているうちに時間だけは過ぎていき、嫌な感じで前半終了。
ハーフ・タイムにどういう指示があったのかは、良くわからないが、後半立ち上がりから、明確にチームのペースが出てきた。中盤での余分なパス交換が少なくなる。前半はゴールへ直線的に向かう動きが多かったのだけれども、後半は左右のスペースへ、長めのボールを入れ、そこへエリオットやモリソンを走らせるような展開へ。特にエリオットは持ち前の速さを活かし、相手DFラインの裏へ何度も走りこむ。そういうプレーを繰り返していく中で、だんだんと攻撃のリズムが生まれてきた。
先制はアイルランド。前半から時折、前線までオバーラップを仕掛け、攻撃のいいアクセントとなっていたオシェイが相手のボールをインターセプトし、そのままダイレクトでDFラインの裏へ、そこへ走りこんだのはエリオット。相手DFのプレッシャーを後ろから受けながら、相手GKも飛び出してくるなか、いち早くボールにさわる。その刹那、遅れてタックル気味にGKが突っ込んできてPKをゲット。これをハートが、GKに反応されるものの、力で強引にねじ込むようなシュートを決め先制。ハート復帰2戦で2点目。これで当面使わない理由はなくなった。
1点取って、気が晴れたのか、それからはしばらくアイルランドのペースが続く。シンプルにボールを廻し、スペースが生まれた、そこへエリオットを走らせる。ウィングとフルバックがそれをサポートし、サイドに拠点を作る。そこからのクロスでゴールを狙う。しかし、今日はモリソンが今ひとつ。前後半を通じて、おそらく数回の決定的チャンスを逃す。
しかし、追加点はほどなく入る。決めたのキルバーン。ゴール前の混戦からこぼれたところを強烈なミドル・シュート。公式記録はもしかすると相手DFのオウン・ゴールになるかもしれない。彼のシュートがコースを消そうとした相手DFにあたりゴールの逆サイドへ反射。これではGKはノーチャンス。しかし、リプレイを見ている限り、元々ゴール右隅の厳しいコースへ飛んでいたので、もし相手DFが触れることがなかったとしても、シュートは決まっていただろう。
後半78分にモリソンに代わり、ドハーティをFWとして投入。この辺からまた少しリズムが崩れはじめる。アイルランドが少し勝ちを意識し始め、プレーがちぐはぐしてきたようにも感じられたし、フェロー諸島が最後の力を振り絞り、全力で反撃に出てきたことも影響しているのかもしれない。右フルバックに入った、カーがプレッシャーを受け、中途半端なバック・パスをギヴンに送ったとき、まるで酷い時のニューキャッスルで何度か見せられた悪夢のようなプレーが、また繰り返された。これはギブンがPAの前まで飛び出し、相手FWより一瞬先に触り子となきを得た。
それでも、なんとか凌ぎきり、貴重な貴重な勝ち点3をゲット。試合のMOMはエリオット。まだまだ荒削りながらも、スピードはあるし、ポスト・プレーからワン・タッチでボールを落とすプレーに非凡なものを感じさせる。怪我なく、そしてチームがどん底の状況まで落ちずに、踏ん張りきれれば、来シーズンのプレミア・リーグで二桁得点も夢ではないだろう。惜しまれるは、あと身長が10センチ高ければ。さすがにロビー、エリオットの2トップでは前線の高さが足りなすぎる。もちろんこの二人には、それを補うだけのテクニックと、スピードがあるので、将来的にはそういう方向へチーム戦術をシフトしていくのであろう。それがこの秋になるのか、それともドイツの前になるのか、ドイツの後になるのかは、ブライアン・ケアーの胸のうち一つ。
これで、スイス、フランスより一試合試合消化が多いものの、グループ・リーグ首位へ返り咲いた。スイスは次は9月3日ホームでイスラエル。フランスは同じく9月3日にこちらもホームでフェロー諸島戦。その次が9月7日アイルランドVSフランス。この日には他に、キプロスVSスイス、フェロー諸島VSイスラエルもある。おそらくこの連戦が一つの運命の分かれ道。2試合あるイスラエル、フランス、スイスのうち連勝するチームが出てくると、そのチームに1位通過の希望が出てくる。このサヴァイヴァル・レースに生き残るためには最低1勝。もちろん一試合しかないアイルランドにとっても。
今日見ている限りだとフェロー諸島にフランスに引き分けろというのは酷な話なので、できれば怒らせてフランス選手に不必要なカードを与えるべくがんばってください。あと、うまく守れば、イスラエルとドローまではあるかもしれない。おそらくイスラエルは、主体的に攻撃を作るまでのレベルには達していない。結構熱いサポータがいるみたいだったしね。
このグループ4は8月にフェロー諸島VSキプロスが組まれているだけで、またしばらく中断。次は9月。そのころには怪我人も復帰しているだろうし、親善試合などを通じて、戦術の見直し、新戦力のテストもあるだろう。まだまだ道半ばにして、険しいものの、光はまだ見えている。フランス戦はなんとかしてチケットを取りたいところ。ほんとラウンズダウン・ロード壊れて、急遽クローク・パークでやらないかな。
順位 チーム 試合 勝 分 敗 得点 失点 得失 勝点 1 アイルランド 7 3 4 0 11 4 7 13 2 スイス 6 3 3 0 13 4 9 12 3 イスラエル 7 2 5 0 10 8 2 11 4 フランス 6 2 4 0 5 1 4 10 5 キプロス 6 0 1 5 4 12 -8 1 6 フェロー諸島 6 0 1 5 3 17 -14 1
Faroe Islands Team Statistics Ireland 48% Possession 52% 0 Goals 2 1 Shots on Target 8 6 Shots off Target 12 3 Blocked Shots 5 6 Corners 7 18 Fouls 10 3 Offsides 8 3 Yellow Cards 1 0 Red Cards 0
ポゼッションで、最近のアイルランドが相手とほぼ互角というのは珍しいです。
アウェイのフランス戦ですら、ポゼッションで凌駕したぐらいだから。それぐらい今日はボール・コントロールが難しく、ファール覚悟で突っ込んでくるフェロー諸島の選手が良かったということ。オフサイドの8回取られている。シュートも結構セーヴされたのね。アイルランドのイエロー・カードはモリソンのオフサイドに関連して審判に抗議したロイのものです。頼むから最後のスイス戦出られないとか勘弁。むしろ次のフランス戦でもう一枚もらってキプロス戦休む方がいいかも。