親善試合 アイルランド代表 vs ポルトガル代表

午後から曇り気味、天気予報だと微妙な感じ。降るかもしれないし、そうじゃないかもしれない。街で雑用を片付けている時に、ふと気になってブックメーカーへ。もちろんアイルランド勝利のほうがオッズは低い。一番おいしそうなオッズは引き分け。これだと2倍はこえる。それでもそんな低配当だと面白くないと5分ほど他のオッズも合わせて検討。これが真剣勝負ならば、僕の見立てでは鉄板で1-0アイルランド勝利。根拠は両チームともに好調だけれども、前回の対戦、2001年日韓ワールドカップ・予選、このときは1-1の引き分け、このときからの上積みを考えるとややアイルランド有利かというもの。あの試合も監督が試合を壊すような采配をしなければ勝てる試合であったし。

これをお気楽ご気楽な親善試合だと考えると、まあ2-1ぐらい。ポルトガルがどれぐらい気を抜くか、アイルランドがどれぐらい若手をテストするのか、次第と言う感じ。散々悩んで結局、両陣営がどういうところに焦点を合わせてきているのか、ちょっとわからないということで購入を見送る。最後まで悩んだ組み合わせは「2-1、アイルランド勝利、最初の得点者 ジョン・オシェイ」これだと軽く100倍を越える。

アイルランドのスターティング・イレヴンはこのような感じ。


==========ロビー=======モリソン=============
============================================
ダフ=====キルバーン=====ホランド======リード
============================================
オシェイ==カニンガム==オブライエン==フィナン
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==================ギヴン====================

今回召集辞退したロイの代わりにホランドが入っていることをのぞけば、現状でのベスト・メンバーというところか。

一方のポルトガル

一方のポルトガルはおそらく


=================Pauleta====================
====Simao======================Ronaldo======
===========Tiago=========Deco===============
==================Petit=====================
Rogerio Matias==Caneira===Andrade===Ferreira
============================================
=================Ricardo====================
  


こういう感じ。

デコが気持ち前目だったので、人によっては4-2-3-1と表現するかもしれない。でもイメージとしてはロッベン健在の時のチェルシーみたいな感じ。

簡単に感想を書くと前半は攻撃練習、後半は守備練習。

攻撃面に関しては、ダフが去年の秋よりは確実に一ランク上の選手になった、という印象。とりあえず相手のマークが一人だと、マークがないのも同じ。二人ついてもかなり高い確率で抜ける。だから彼が前を向いた状態でボールを持つとそくチャンスという、文字通りの「飛び道具」。

そのダフの良さを引き出しているのが、リード。彼も去年より格段に成長した。アイルランド代表では、右ウィングが基本的なポジション。しかし試合中、ダフとポジション・チェンジを頻繁に行うことで、相手を混乱させる。また、ダフがドリブル主体で相手を崩すのに対して、リードは味方とのコンビネーションを主体に相手を崩すタイプ。この試合でも何度かロビーとのコンビネーションで、相手DFライン裏へ飛び出すことに成功した。この試合、もっとも美しかったムーヴ、リードからロビーへのロングパス、ロービーのポストプレーから中盤へのリターン、パスの後、一気のフリーランで相手マークを外しフリーでそのリターンを受けるリード、そして彼から、相手DFライン裏へ目指しオーバーラップをしかける右フルバック、フィナンへのスルーパス。このムーヴもリードが主体としたもの。このように左右にタイプの違うウィングをおき、なおかつ頻繁にその場所をチェンジされると、相手DFからすれば厄介以外の何物でもないだろう。

この試合において、ダフとリードの狙いはアイルランドに右サイド、ポルトガルの左サイド。この局面はこの二人の質の違う攻めで完全に制圧された。

一方左サイドでの崩しはそれほどみられなかった。これはおそらくセントラルMFキルバーンの出来が今ひとつだったことに由来するだろう。通常左サイドの崩しは、ダフを後方から支援するオシェイと、中盤からフォローに来るキルバーン、前方から楔に入るロビー、彼らの細かいパスワークで、ダフができるだけフリーで前を向ける状況を作り出せるかどうかにかかっている。この試合に限って言えば、雨でグランドが滑りやすいということも影響したのか、キルバーンのボールコントロールのミスが目立ったような印象がある。

もう一つ要因挙げるならば、ロイの不在。今回ロイの代わりを勤めたのはホランド。もちろんホランドは悪い選手ではないが、ロイほどボールの供給、特にサイドへの早いパス回しが得意な選手ではない。*1後半開始から、ホランドに代わりカヴァナーが投入されても状況は代わらなかった。カヴァナーはタイプから言えば、現在のアイルランド代表で最もロイに近いタイプの選手。的確なパス配給と中盤での激しい守備が身上。ただし、ホランド、カヴァナーという組み合わせだと、攻撃に際しての中盤の押し上げという点で課題が残った。今回、それほど調子が良くは見えなかったキルバーンだけれども、自陣ペナルティ・エリアから相手ペナルティ・エリアまでカヴァーする運動量は魅力であるし、かれの細かいサポートがあってこそ、現在のアイルランド代表の攻撃が成り立っていることを改めて実感させた。

守備に関しては、今日は完璧といっても言い出来だろう。クリスチャン・ロナウドのドリブルはやはりトリッキーだけれども、ダフの相手DFを抜き去り、一秒でも早くクロスを上げることを前提としたそれとは、危険度が違う。スピードでは若干の不安の残るアイルランドDFラインであるから、彼がもう少しシンプルなプレーで、スピードを生かすような攻めを心がけたら、もう少し冷やりとした場面も増えたのかもしれないが。ただ、これは彼ばかりの問題ではなく、ポルトガル攻撃陣全体のバランスの問題かもしれない。前半だけの出場であったが、デコは今回ほとんどボールに絡めなかった。同じく前半だけであったチアゴも同様。それぐらい今日のアイルランド代表の守備、とりわけ前半は、硬く有機的なものであった。これはいつもになくFWからのプレスが徹底され、それに伴いいつも以上にDFラインを押し上げられたことにつきるのだろう。

得点を決めたオブライエンの出来は非常に良かった。得点シーンは前半20分過ぎ。リードからの左コーナーキックを、ニアに飛び込んだオシェイが後ろに流し、飛び込んだオブライエンが押し込んだ、というもの。意外にもオブライエンはこれが代表初得点。プレーにむらがあるのと、たまに集中力がきれたかのような信じられないようなミスをすることがあるものの、上背あるし、スピードもそこそこあるので、基本的にはいいDFだと思う。上記の欠点がなくなれば、プレミアでもトップクラスになれると思うが。

後半選手を大幅に入れ替えてきたポルトガルに対して、アイルランドの守備陣も本番を見据え、主将カニンガムが出場できない場面を想定したテストに。代わりに最終ラインに入ったのはリチャード・ダン。カニンガムの読みをベースとした守備と比べると、己のフィジカルを頼りに肉弾戦を挑むタイプのダンだが、まあ無難に代役を務める。ダン、オブライエンという並びは物凄く怖いものの、最悪これでもどうにか凌ぎきれることが証明されただけ、良いテストであったのであろう。ただし、最終ラインからのフィードという点で言えば、もう少し工夫が必要かもしれない。

こういう感じで後半はもっぱら非常事態を想定したテストに費やされた。
カヴァナー投入で、ロイ、キルバーン不在の状況のテスト。
ダン投入は、カニンガム不在のテスト。
後半70分には、ダフに代わりミラー投入。これはダフを欠いたときのテストということになるだろう。この交代の結果、右のアンディが左へ、ミラーが右ウィングへという形に変更になった。ダフ、アンディが頻繁にポジションを入れ替えたのに比べ、ミラーの場合そういう動きはほとんど見られない。またミラーはアンディ以上に縦への意識が乏しいので、前線での動きが固定化してしまう。あと、技術に関しては申し分ないのだけれども、今シーズン彼がマンチェスターUで苦労しているのは、このあたりにあるのかもしれない。もう少し状況判断のスピードをあげる必要があるだろう。

最後のテストはロビー不在のシチュエーション。交代は80分過ぎとテストには若干短かったものの、投入されたマクゲティは可能性を見せつけた。元来ウィングタイプの選手なだけにスピードとドリブルはこのレベルでも充分通用する。足りないのはシュートへの意欲か。まあ10分足らずの時間では、そのポテンシャルをすべて見せるには足りなかったか。

ロスタイムにはミラーとリードによる鹿島アントラーズを彷彿とさせるような時間稼ぎを見せつけ、無事1-0で勝利。

ポルトガルは対戦前に抱いていたイメージとちがい、結構あっさりしたチームだった。前半は中盤がほとんど機能していなかったし、DFも左サイドは完全にアイルランドに制圧されてしまっていた。相手FWを抑えることはある程度成功していたし、オフサイド・トラップは機能していた。しかし、後半途中からはプレッシャーに慣れてきたモリソンに制空権を奪われ、ロビーにもなんどか反転され、ピンチを招いていた。それでもアウェイでサブの選手を試しながら失点1なら攻められるほどのことではない。問題は攻撃陣か。印象からいえば後半の面子の方が攻撃の組み立てが成功していたように思える。ただしこれは、アイルランドも若干選手を入れ替えた影響ということもあるので、割り引いた方がいいかもしれない。中盤やウィングに比べるとFWが怖さを感じさせないということが、やはり最大の問題点なのだろうか。

アイルランドは今年最初の親善試合を白星発進ということで、3月のアウェイ、イスラエル戦に弾みをつけた。怖いのは怪我。だいぶ改善されてきたとはいえ、選手層の薄さは問題なので、あと一ヶ月ちょっと怪我だけは、勘弁ということで。

*1:全盛期は過ぎた感はあるものの、未だにロイのパス成功率の高さはプレミアでもトップ・クラス。今シーズンもオプタ・データ上は最も高い数値ははじき出している