拉致X100ユーロ紙幣Xチラシ寿司

朝、電話で起こされる。
前の家主からの電話。
ようやく払ってくれるらしい保証金の返金。
なんでも今日はDIT*1でお仕事なんで、それが終わったあとにお茶でもしようとのこと。
了解。昼下がりにそこまでいきますわ、と僕は答える。

仕事がのってきたら、気がつけば約束の時間のちょっと前。
僕の部屋からそこまでだいたい歩いて30分。
これぐらいの距離なら歩いた方が早いのがダブリンの常。
コートを着て、部屋を出たその刹那、携帯電話が鳴る。
家主からの2度目のコール。
どうしたの?
急にミーティングが入ったので、夕方に変更できる?
了解。夕方出直します。

一度途切れた集中力はなかなか元には戻らない。
それでもやらなきゃいけないことは山積み。
とりあえず、やるだけやる。これしかない。
気がつけばまた約束の時間のちょっと前。
今度は電話は鳴らない。

待ち合わせ場所に近づいたときに、三度目のベル。
どこにいるの?
今そこへ向かっているところ。
ちょうど交差点に差し掛かったとき、家主の車が目の前にあった。

ついでだから子供達にあってく?
うん、会いたい。覚えているかな?僕のこと。
うん、大丈夫、彼らも会いたがっていた。

車は一路子供達の通う学校へ。
子供の成長は早い。
毎日少しずつ大きくなる。

一緒に住んでいたころは、僕の名前を呼べなかった子供が、
今ではちゃんと僕の名前を完璧に発音できるようになっている。
そしていつもと変わらぬ笑顔。

道中、僕が前に払った保証金を返してもらう。
手持ちが足りないらしく100ユーロはチェックで。
300ユーロは現金で。
初めて見たよ、100ユーロ紙幣。

さてこれからどうしましょう?夕食はいかが?
いいよ、何でも。
そういえば、まだ寿司の作り方をおしえてもらっていないわね。
了解、今日教えるよ。

車は郊外の大きなスーパーへ。
大きく、そして富裕層の住む町だけあって品揃えも豊富。
でもさすがにかつおぶしもだしのもとも昆布も乾燥シイタケもない。*2
でも米酢は売っていた。
キッコーマンの醤油もある。
わさびも海苔も日本米も持っているらしい。
どうにかチラシ寿司ぐらいは出来そうだ。

子供達ようのごはんを先に作りつつ、
チラシ寿司を作る。
レシピは頭の中にある。
いつもいいかげんに作っているのだけれども、
横でメモを取りながら、観察されると、ちょっとは量りや計量スプーンを使ってみたり。
自分でやるときはほとんど使わないくせに。

彼女は僕の二番目の弟子になった。
このチラシ寿司は結構いい加減だし、かなり外人向け。
それにアイルランドで手に入る食材で構成されたもの。
でも、結構おいしいと思う。
なんせ僕は日本の「ネイキッド・シェフ」、ライク・ア・ジェミー・オリバー!*3
まあアヴォカド入りのチラシ寿司なんて邪道と言われれば、それまでだけど。

でもダシやみりんがないのはちょっと痛い。
途中で思い立って日本酒があればと思って聞いてみる。
ええ、あるわよ。
あるなら先に言え。
出てきたのは、僕が昔日本からお土産に持ってきた純米吟醸*4
もったいなくてそんなの料理に使えない。

ビール呑みつつ調理。
久しぶりの純米吟醸呑みながら、チラシ寿司。
でも帰ってきたのは午前様。何時間拘束されていたんだ?

ところでハンターXハンターはどこまで話が進んでいるのでしょう?
作者が作者だけにまったくもって想像できません。
結構幸せ。和食サイコー。

*1:ダブリンにある理系の大学

*2:アジア食材店にいけばこれらは入手可能。鰹節だけは高くてとても買えないけど。だから自炊で和食は結構簡単にできる。すべて中国人や韓国人のおかげ。なんせ彼らはダブリンで豆腐を作っているぐらいだから。

*3:とよく英語圏の人に言っています。でも僕の方が彼より繊細な料理ができると思います。だっていつもオーブンにぶち込んで終わりなんだもん、テレビだと。

*4:空港で買った賀茂鶴純米吟醸。予想以上にフルーティ。