家族滞在4日目

今日は朝からショッピングらしい。

朝ごはんはビューリーズのカフェで食べ*1、その後オヤジ樣はテンプルバーに戻って、絵を描くらしい。妹様と母様を連れて、アヴォカとかキルケニー・ショップとかブラウン・トーマスとかをぐるぐる回ってお買い物。

昼過ぎにオヤジ樣と再合流。オヤジ樣曰く、
「せっかくだからフィッシュ・アンド・チップスを食べてみたい」

いや、止めておけ、どうせ口に合わないから、といっても聞かないので、しょうがなく、ビショホフという観光客ぐらいしかいかないフィッシュ・アンド・チップス専門店へ。絶対一人一皿喰えないと思ったので、2皿だけ注文。フレッシュ・コッド(燻製にされていないタラ)とスキャンピー(小エビ)のフライと、一皿はチップス、もう一皿はサラダという組み合わせ。結果大人4人で二人前食べきれない。そんなもんだろう。僕は一人で一皿食べられないことはないのだけれども、食べたあと確実に体調が悪くなるので、半人前ぐらいがちょうどいい。僕は見た目と違い、あんまり食事の量は多くない。アルコールでカロリーを接種しているから、それぐらいじゃないとちと辛いのです。アイリッシュと同じ量は絶対に食べられない。体の構造がそもそも違うのだから。

両親も妹樣も、やっぱり小食だし、胃腸はあんまり強い家系じゃないから、毎食ごとに胃腸薬を飲んでいたりする。できるだけ野菜を多く食べられるようなメニューを注文しているけど、それでもやっぱり無理がきている模様。アイリシュ・ブレックファーストなんぞ3日も連続して食べたら、僕でも朝から胃腸薬が必要になるから、まあしょうがない。

その後、まだ行っていなかったので、オコンネル・ストリート、ヘンリー・ストリート、そしてムーア・ストリートを巡る。ダブリンの南と北がどう違うのか、実感してもらいたかったから。さすがにムーア・ストリートあたりだと、その違いが明確にわかった模様。でも、これが、現在のダブリンの現実。妖精の国でも、陽気なアイリッシュの街でもなく、いろんな文化が混在し、混沌とした街。それが今のダブリン。そして僕が、外国人として暮らす街。活気があって、すこし危なくて、たまにむかつくけど、基本的に今ダブリンは変化の過程にあって、ちと楽しい。ちょっとずつ、ちょっとずつ、日々変わっていく。もう少し物価が安くて、皆がきっちりと約束を守って動いてくれると、正直ありがたいのだけれども。

北をわかってもらったところで、南側、グラフトン近くまでもどり、最後のショッピング。妹樣にはCDを運んできてもらった駄賃も含めて、ちと今っぽいデザインにアレンジされたクラダ・リングを買ってあげる。兄が妹に指輪を買ってあげるっつのは、正直どうかと思うけど、いつも結構なんかいろいろと買わされているので、まあいいやということで。実際、彼女に持ってきてもらったCDに関して、僕は心から感謝しているしね。そんあ感じで必要なものをすべて購入し、ホテルにもどり小休止。

夕食は僕がここでお世話になっているホスト・カウンセラーの方といっしょにすることになっている。彼女がアイリッシュ・ミュージックとリバー・ダンスもどきをやっているパブを押さえてくれた。せっかくだからと、アイリッシュ・シチューとかそういうアイルランド料理を食べさせつつ、音楽や踊りを楽しむ。その間、ほぼ同時通訳。親父様のくだらないギャグ以外はね。そんなん翻訳不可能だから。いいたければ、自分で英語で考えろ。

家族の皆様にとって、これがはじめてのアイルランド音楽だし、リバー・ダンスだったりするわけで、結構楽しんでもらえた模様。

その後、夜のテンプル・バーを通り抜けて、ホテルまで。目論見どおり、道端で喧嘩しているアホ・アイリッシュ樣ご一行がおられたので、ここでも現実のダブリンも見てもらえた。僕は一年はこの街で暮らしている。そして僕は歴史家だ。だから、アイルランドに対して、ダブリンに対して、幻想を抱いたりはしない。妖精も陽気なアイリッシュというのも、僕からしてみれば幻想なんだ。ケルトなんてはっきり言えば、EU統合のために、政治的に発掘された、作り出された新しい概念なわけで、ケルトの文化の連続性なんぞ、嘘っぱちだと思っている。だからこそ、僕の家族には、そういう幻想をベースにしたアイルランド像、こっちのほうが明らかに観光客にとっては受け入れやすいのだけれども、でも、そんな嘘に固められた幻想よりも、僕の今居る場所の現実を見て欲しかった。そのために、結構考えてプランは練ったし、それをほぼ実現できたと思う。そういう現実を経験してこそ、はじめてアイルランド人の神秘性とか優しさとかが、できると信じているから。

つうわけで、明日の朝、彼らは日本へ帰ります。まあ疲れたけど、楽しく過ごせました。「東京物語」のようなオチにならないことを祈りつつ。でも、ちゃんと世話したから大丈夫かな?

*1:ここも初めて入った。テイク・アウェイのコーヒーぐらいは買ったことがあるけど。一年住んでも、ほんとに観光客が行きたがるようなところはほとんど行っていない。