おーでぃしょん

夏の初めぐらいに日本人の知人からメールが届いた。
なんでも、その人の仕事で付き合いのある、とある会社が日本語話者を探している。
で、時給がいいので、アルバイトしてみませんか?とのこと。

断る理由も特にないので、OKの返事を出した。

それからほどなく、その会社からオーディションへ参加しないかという旨のメールが届いた。もちろん返事を出した。「いつでもOKですよ」って。

その後、返事は来ない。同じときに誘われた日本人の知人は次の週にオーディションへ
行ったそうな。他の日本人も来ていたらしい。でも、僕のところには・・・・

まあ、アイリッシュのすることだからと、すっかり忘れていたら、また最初に誘ってくださったかたからまた、メールが届いた。「まだ日本語話者を探しているみたいなんで、
もう一度メールを送ってみては?」と。

めんどくさいな、と思いつつ、もう一度メールを書いてみた。これは先週のお話。
そしたら、直ぐに返事が戻ってきた。「前回、ちゃんとメールの返信したよ」と言い訳つきで。まあいいやと、とりあえず、交渉を続けた。

何気に今週以降忙しくなるので、ほかの予定とバッティングしたら、断ろうと思っていたら、ちょうど何にもない今日の夕方から、来てもらえないかということ。しゃあねーな、と、バスにのり、路面電車に乗り継いで、ダブリンの南部の新興ビジネス・センターにあるその会社まで。

今日のオーディションは、都合6人。僕以外は皆ヨーロッパ人。フランス人とか、デンマーク人とか、オランダ人とか。

オーディションは最初会議室みたいなところで、渡された紙に書いてある内容をそれぞれの母国語でしゃべるという感じ。書いている内容は、その会社が今製作中のソフトの各国語版に関する内容。ビジネス・マネージャ教育ソフト(CD-ROM、オンライン)を制作しているそうな。

まあ、ソフトの概要に関する音声ガイダンスや、場面ごとに応じた音声が必要らしい。
例えば、上司との雑談中に、自分の将来に不安を感じた「ジョン」君の台詞とかね。

台本のコピーみたいなのを渡されて、感情を込めて喋るように要求されたりするわけです。否定的なニュアンスでの、「ありがとう」とか、ポジティブな感情でとか、上司に発言に対して、感情的に反論している台詞とか、そんな風に。それを各国語でやっているので、なんだか、シチュエーション・コントの一場面みたいな雰囲気。担当の人も、最初、それを英語で演じてみて、それぞれの言語風に各自にアレンジして、それを演じる。日本人の僕が一番下手のは、まあしょうがない。休み時間に、皆に、日本人と感情表現が違うから大変でしょと、慰められたりした。

これが一次審査らしく、その後、スタジオに入って、声を録音。これもさきほど会議室で渡された長めの文章をもう一度、読み直す。

都合2時間ぐらいのオーディション。一応、OKみたいで、契約書にサインして、後日呼び出しに応じて、そこへ行くらしい。ほんとに呼び出されるかははげしくなぞだけど。

問題なのは、担当の人たち、誰一人日本語をまったく理解していないということ。どこをどういう風に判断したのか、僕には皆目検討がつかない。なんせ、録音したやつを僕に聞かせて、間違いがないか確かめてくるぐらいだから。ちなみに僕は、中学、高校と放送部で、自分がいかに活舌が悪いかは、嫌なほどよく知っております。