たぶん最終回 −さよならなんていえないよー

久しぶりに学校へ。論文用の基礎データで足りない部分を調べに図書館へ。その後所用を済まして、帰宅したのは午後9時。いつもの見慣れた風景だけど、何かが違う。僕の隣の部屋、そう、カールとジェネが暮らしていた部屋の窓際にはいつも、二人のラブラブ写真が飾られている写真立てがあるはず。でも今日はない。いつも閉まっているカーテンも、閉まっていない。

実は家主から今週中に立ち退くように伝えた、ということは聞いていた。

昨日からなんか部屋の片付けをし始めているのも知っていた。

でも、まさか、もういなくなっているなんてことは、と思い、家の中へ。

玄関には「I LOVE YOU」という文字の入った見慣れぬゴリラのぬいぐるみ。
それですべてがわかった。彼らはもう出て行ったのだ。

僕の部屋の隣の彼らの部屋はもぬけのから。いくつかの服、カールの買ったばっかりで、まだ着用した形跡のない、新品の冬物のズボンとか、がベットの上に散乱しているばかりで、それがまたすこしばかし物悲しかったりもする。

やれやれ、正直な感想はそんなところ。
公共料金の支払いとか、鍵の受け取りとか、今の段階じゃ何もわからないけど、たぶん彼らは二度とこの家に戻ってくることはないだろう。今日越すことがわかっていれば、昨日少しばかり酒でも飲むんだったなと思いながら、台所の冷蔵庫を開ける。

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やられた。

記憶が確かならば、数本残っているはずのビールがない。

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もうコンビニ閉まっているんですけど・・・

最後にきっちりとオチがつけられるようになるとは、彼も成長したもんだ。
まあいい、餞別代りにとっておけ。そのかわりこんどどこかの酒場で会ったら、倍返しでよろしく。そのころまでには、もう少し賢くなっていろよ。