ワールド・カップ予選 イスラエル VS アイルランド

無敗同士の対決となった一戦。アイルランドとしてはぜひ勝ち点3をアウェイで獲得し、強豪とホームで対戦する後半戦につなげたいところ。

アイルランドのスターティング・メンバーはこんな感じ

      ロビー  モリソン

 ダフ  キルバーン  ロイ    フィナン

オシェイ カニンガム オブライエン  カー

         ギヴン 

これはブライアン・ケアー指揮下のアイルランドで、本人曰くもっともかみ合っていたワールド・カップ予選フランス戦のスターティング・メンバーと一緒。おそらくアウェイということもあり、ある程度守備的な要素を考慮にいれた布陣といえよう。しいて弱点を挙げるとしたら、アンディをメンバーから外しているために、必然的に効果的なパスの出所が一箇所減る、ということと、セット・プレー、特に直接FKでの得点の可能性が減るということ。

一方のイスラエルは戦前の予想通り3-5-1-1。3バックに両サイドにウィング・バック、守備的MFに2枚とこちらも守備を重視したフォーメーション。*1

ゲームはいきなり動く。前半3分。左サイド中盤ででパス交換を行ったオシェイからのスルーパスが前方でフリーランを開始していたダフの足元へ。マンマークについている相手ウィング・バックのマークは振り切れなかったものの、そのままセンターリング。これが運悪くパスコースを消そうとした相手マーカーにあたり、ペナルティ・エリアの中へボールが。こぼれ球を瞬間的なスピードを生かしたモリソンがほとんど角度のないところからダイレクトにゴールへ叩きこみ、アイルランド先制。

しかし、皮肉なことに、このゴールがアイルランドのゲーム・プランを完全に狂わせる。全体的にみると前半はアイルランドがポゼッションで上回る展開。しかし、パスは回っているものの、相手を崩すという状況はほとんど作り出すことができない。中盤では完全にイスラエルの方が人数的に優位を保っている。サイドでボール・キープしたところで、マンマークのウィング・バック、パスコースを消しにはいる守備的MF、ペナルティエリア近くになるとCDFの一人がドリブル・コースを消しにプレスに参加する。こうなるとさすがのダフもお手上げ。
ボールはサイド→中盤→サイドと移動するが、相手のマークがほとんどずれない。苦し紛れのバックパスは相手FWが待ち受けているという感じで、打つ手なし。フルバックまで上がると見ると、ボール奪取からそのスペースへ展開パスをだされ、カウンターの餌食。頼みのFW2人は相手のマンマークに苦しみなかなかペナルティ・エリアの前でボールを受けられない。そのプレスから逃げるように中盤まで戻っても、相手のポジショニングやプレスの受け渡しがなかなかズレないために、どうも攻撃がかみ合わない。

実際のところ、今日のイスラエルは強い。対アイルランドということを考えたならば、最初のエア・ポケットに入ったかのような失点を除けば、ほぼ完璧に相手の長所を消し、もっとも苦手なゲーム展開を作り出すことに成功していた。中盤での運動量、ここぞというときのタックルの強さ、カウンターの正確さ、どのポイントをとってもアイルランドを上回っていた。だからといってイスラエルアイルランドより戦闘能力が高いというわけではない。弱者が取るべき最善のスタイル、そうユーロの時のギリシャのイメージ。それを出来る範囲で、面子に合わせてうまく適合させているのが現在のイスラエル。このグループ・リーグ無敗でここまで来ているのは伊達じゃない。

アイルランドとしても一点リードしている以上無理攻めをするような雰囲気でもなく、そのまま前半終了。

攻撃に関してはイマイチであったが、守備でもいくつか問題が見られた。特に右フルバックのカー。大体一試合に1,2回は致命的なミスを犯す選手なんだけど、その攻撃参加能力でそのミスを帳消しにする、それが彼のスタイル。しかし、今日の場合、攻撃参加はいつもより少ない。アウェイで一点リードという展開で、無理に上がる場面が少ないということもあるし、イスラエルのスペースを与えない守備が功を奏し、彼が上がるスペースがそもそもほとんど与えられない。その最大の持ち味の攻撃が機能していないだけに、やはり彼の守備でのミスは少し危険であった。クリアーすべきところでボールを持ちすぎたり、他のDF、GKとの連携ミス、マーキングのズレ。次節はカード累積で出場停止なため、彼のポジションはフィナンが務めることになるだろう。

そういうまったりとした前半に比べ、後半は幾分ペース・アップする。イスラエルも一点リードされたままではどうしようもないので、より攻撃的にフォーメーションを変化させる。途中交代でFWの枚数を増やすなど、打てる手はすべて打った。一方アイルランドは、ようやくスペースができ、攻撃の形が作れるようになるものの、選手交代が遅い。残り10分の段階でようやくモリソンに代えて、ホランドを投入した。そしてそれが唯一の選手交代となった。この交代によって、ダフがFWというか中盤の高い位置で自由なポジションへ、キルバーンが左のウィングへ、ホランドは中盤という形となる。アイルランドとしては、できるだけポゼションの比率を高め、相手の攻撃時間を減らし、チーム全体のバランスを維持しながら、相手の攻撃を凌ぎきる、というゲーム・プランであったのであろう。しかしそれを実効させるほどは、控え選手の層は厚くない。結果として動きたくても動けない、そういう展開となる。

アイルランドの方も何度かおしいチャンスをつかむ。しかし後半に関してはイスラエルの方が決定的なチャンスをつかんだ回数は多いのではなかったのだろうか。カニンガム、そしてギヴンを中心にイスラエルの総攻撃を耐えた。が、最後、ロスタイムに痛恨の失点。イスラエルの15番が右サイド、フリーでドリブル開始、ペナルティー・エリアの選手へ楔のパス、オフサイド・トラップを掛けるアイルランドDFライン、戻したパスを中盤から上がってきた選手のミドル・シュート。これがゴール右隅へ決まり、イスラエルが土壇場で同点に追いつく。

アイルランドは残り時間必死に攻めるものの、ダフのミドルがゴールポストを叩き、運にも見放された。

結果イスラエルアイルランドと同じく勝ち点9で現在暫定2位。水曜日のフランス戦はもしかすると大番狂わせがあるかも。

最後に愚痴というか、疑問。アイルランドの失点シーンで、イスラエルFW3人がオフサイドなんだけども。一人はボールに足を伸ばしているから、プレーに関与しているような気がするんだけど。まあ、次節6月にダブリンでリベンジすればいいだけのこと。

*1:僕がFootball Manager 2005で弱いチームでやるときにとるフォーメーションに近い。このフォーメーションのポイントはウィングが攻撃を組み立てるプレミア的フラットな4-4-2に最適化した守りの形。2トップを3人のCDFで、ウィングは完全にマンマーク。守備的MFがスペースを消しつつ、相手のCMFの上がりを押さえる。で前線からプレスを掛けまくると、よっぽどの戦力差がない限り相手の攻撃を抑えることができる。もちろん攻撃が手薄になるけど、これは相手陣内でのボール奪取から全力疾走のカウンターを仕掛ければ、ゲームの上では1-2点は取れる。主な得点パターンは中盤から楔のパス、中盤へリターン、強烈ミドル!